住宅を購入する際には、さまざまな補助金や減税制度を活用できます。
とはいえ、住宅の購入は一生に一度という方がほとんどです。
どんな制度があり、どのように活用できるのか、わからない方も多いでしょう。
そこでこの記事では、住宅を購入する際に利用できる補助金制度や、申請できる減税制度についてご紹介していきます。
補助金額と減税制度を把握して、お得な住宅購入を進めていきましょう。
1.住宅の購入時に活用したい補助金の種類
まずは、住宅購入の際に利用できる補助金事業からご紹介していきましょう。
1-1.ZEH支援事業
ZEH支援事業は、省エネルギーハウスの建築を奨励するために環境省が公募している支援事業です。
電気やガスといったエネルギーを、あまり使わない家を建てるときに利用でき、いくつか種類があります。
1-1-1.ZEH(ゼッチ)
一定以上の断熱性能、省エネ基準比20%以上、再生可能エネルギー導入100%以上を満たしていることが、一般的なZEHの要件です。
そのほか、太陽光発電によるエネルギー生産や、高機能機器の導入を条件にしたものや、寒冷地や都市狭小地等限定で利用できるものなど、いくつか種類があります。
ZEHの種類
|
条件 |
補助金額 |
ZEH
|
一定上の断熱性能
省エネ基準20%以上
再生可能エネルギー導入100%以上
|
55万円
|
Nearly ZEH
|
ZEHの断熱・省エネ基準に加え、太陽光発電によるエネルギー生産率が75%以上(寒冷地や都市狭小地等限定)
|
55万円
|
ZEH oriented
|
ZEHの断熱・省エネ基準に加え、太陽光発電なしでOK(狭小地等限定)
|
55万円
|
ZEH+
|
ZEHの断熱・省エネ基準に加え、一次エネルギー消費量25%以上削減
規定の高性能機器を導入
|
100万円
|
Nearly ZEH+
|
ZEHの断熱・省エネ基準に加え、太陽光発電によるエネルギー生産率が75%以上(寒冷地や都市狭小地等限定)
|
100万円
|
1-1-2.次世代ZEH+実証事業
ZEH+、Nearly ZEHと同等の断熱・省エネ性能を満たし、かつ蓄電システムや燃料電池、太陽光発電などの高機能機器のいずれか導入した場合に、補助金額が加算されていく支援事業です。
基本補助額は100万円で、高機能機器の導入に合わせて加算されていきます。
1-1-3.次世代HEMS実証事業
ZEH+、Nearly ZEHと同等の断熱・省エネ性能を満たした上で、以下2つの条件をどちらも満たす場合に利用できます。
また、蓄電システムや燃料電池などの高機能機器を導入すれば、さらに補助金額が加算されていきます。
ZEH支援事業の適用条件は、居住用の住宅であることや、ZEHビルダーとして登録されている施工会社が建築を行うことです。
1-2.地域型住宅グリーン化事業
地域型住宅グリーン化事業は、認定長期優良住宅やゼロエネルギー型住宅、高度省エネ型住宅(認定低炭素住宅)などの基準を満たした家を新築すると、各条件に応じた補助金を受け取ることができる支援事業です。
補助金額は以下の通りです。
- 認定長期優良住宅:最大110万円
- ゼロエネルギー型住宅:最大150万円
- 高度省エネ型住宅:最大90万円
また、加算は最大40万円までが上限となりますが、以下の条件を満たすことで補助金額が加算されます。
|
項目
|
条件
|
加算額
|
1
|
地域材加算
|
主要構造材に地域材を用いる
|
20万円
|
2
|
三世代同居加算
|
キッチン、浴室、トイレまたは玄関のいずれを2つ以上設置する
|
30万円 |
3
|
若者・子育て世帯加算
|
交付申請日時点で建築主が18歳未満の子供と同居している
|
30万円
|
4
|
新築:地域住文化加算
|
地域の伝統的な建築技術の継承に資する住宅
|
20万円
|
5
|
新築:バリアフリー加算
|
高齢者等配慮対策等級3以上の設計住宅(専用部分)
|
30万円
|
1-3.LCCM住宅整備推進事業
LCCMは、ライフ・サイクル・カーボン・マイナスの略で、建築、解体、再利用を通じて、CO2排出量がマイナスになる低炭素住宅への支援事業です。
たとえば、以下のような取り組みが対象となります。
- 資材製造・建設段階におけるCO2排出量の削減
- 居住中のCO2排出量の削減(ZEH住宅)
- 改修による住宅の長寿命化や、資材をリサイクルする際のCO2排出量削減
補助金額は、上限140万円/戸で、補助対象工事における掛かり増し費用の1/2以内です。
1-4.こどもエコすまい支援事業
こどもエコすまい支援事業は、2022年度に新設された支援事業で、子育て世代や若年層夫婦世帯を支援するものです。
対象者の条件は以下のいずれかです。
- 18歳未満の子どもがいる
- 夫婦のどちらかが39歳以下
対象となる新築住宅は「強化外皮基準かつ、再生可能エネルギーを除く一次エネルギー消費量20%以上が削減される性能を有する住宅」とされています。
具体的には以下のいずれかの条件を満たすものが対象です。補助金額は100万円/戸です。
ZEH住宅
- 「ZEH」、「ZEH-M」
- 「ZEH Oriented」、「ZEH-M Oriented」
- 「ZEH Ready」、「ZEH-M Ready」
- 「Nearly ZEH」、「Nearly ZEH-M」
令和4年(2022年)10月1日以降に認定申請を行った
- 「認定長期優良住宅」
- 「認定低炭素住宅」
- 「性能向上計画認定住宅」
※対象となる住宅の延べ面積は50㎡以上とする。 ※土砂災害特別警戒区域における住宅は原則除外とする。
2.住宅購入時に知っておきたい減税制度
ここでは、補助金制度とあわせて適用できる、減税制度についてご紹介していきます。
2-1.住宅ローン減税(住宅ローン控除)
正式名称は「住宅借入金等特別控除」です。
この制度を利用すると、年末時点の住宅ローン残高0.7%分(2021年度までは1%)が、その年に支払った所得税から控除され、還付金として返ってきます。
たとえば、ローン残高が3000万円であれば、21万円が控除され、還付金として受け取ることが可能です。
ただし、控除の限度額は、一般住宅(居住用)であれば21万円、認定長期優良住宅や認定低炭素住宅であれば35万円となっています。
適用期間は最長13年間です。ただし、2024年以降の入居では、長期優良住宅や低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅に該当しない住宅の場合、最長10年間の適用になるので注意してください。
加えて、2022年度からは、省エネ基準を満たす住宅を対象に、控除額を算出する際の年末時点のローン借り入れ上限額が高く設定されました。実質的に、税金面のメリットが大きくなった形です。
住宅の省エネ性能 |
ローン借入額の上限 |
2022-2023年入居の場合 |
2024-2025年入居の場合 |
長期優良住宅・低炭素住宅 |
5,000万円 |
4,500万円 |
ZEH水準の省エネ住宅 |
4,500万円 |
3,500万円 |
省エネ基準に適合する住宅 |
4,000万円 |
3,000万円 |
上記に該当しない住宅 |
3,000万円
|
0円※ |
※2023年前に新築の建設確認がされた場合に限り、2000万円が上限となります。
2-2.登録免許税の税率軽減
登録免許税とは、法務局にて不動産の登記手続きをする際に支払う税金のことです。
新築の場合、新しい家を登記する「所有権保存登記」(固定資産税評価額×0.4%)や、住宅ローンを組んだ際に登記する「抵当権の設定登記」(住宅ローンの借入額×0.4%)などが必要になります。
ちなみに、登録録免許税は、2024年(令和6年)3月31日まで、軽減税率が適用されます。
- 所有権保存登記:固定資産税評価額×0.15%、長期優良住宅・低炭素住宅の場合は0.1%
- 抵当権設定登記:住宅ローンの借入額×0.1%
なお、建物の解体時に必要な「建物滅失登記」や、住宅ローンを完済した後に必要な「抵当権抹消登記」に軽減税率の適用はありません。
2-3.不動産取得税の軽減
不動産取得税は、土地・建物などを取得した際に課せられる地方税で、固定資産税に不動産取得税の税率を乗じて、税額が算出される税制度です。
2024年3月31日までは、本則の税率4%→3%に引き下げられています。
居住用の家で、床面積が50平方メートル以上240平方メートル以下であることが適用条件です。
固定資産税評価額から1200万円が控除されますが、認定長期優良住宅の場合は、控除額が100万円上乗せされます。
2-4.固定資産税の軽減措置
一定の条件を満たす新築の場合、固定資産税の軽減を受けられます。
通常住宅の場合は3年間、認定長期優良住宅の場合は5年間、固定資産税額が2分の1になる減税制度です。
建物に関しては、床面積120平方メートルまでが固定資産税減額対象です。
土地に関しては200平方メートルまでの部分は、固定資産税評価額が1/6になり、200平方メートルを超える部分は、固定資産税評価額が1/3に減額されます。
2-5.贈与税非課税措置
住宅を購入する資金に関して、父母や祖父母などから資金援助を受けた際の贈与税が非課税になる制度です。
現在の非課税措置対象期限は、2023年までとなっています。
適用条件は以下の通りです
- 贈与する人が直系卑属である
- 贈与を受けた年の所得が2000万円
- 新築住宅の床面積が50平米以上240平米以下
- 贈与された翌年3月15日までに贈与全額を住宅購入資金に充てる
- 贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上である
2022年4月1日~2023年12月の非課税となる金額は、一定の基準(省エネ住宅や高耐震性住宅、バリアフリー住宅など)を満たした住宅の場合は1000万円、一般住宅の場合は500万円です。
他の減税制度と異なり、非課税措置を受けるには、贈与税の申告が必要になります。
贈与を受けた翌年の3月15日までに税務署へ確定申告をしましょう。
3.住宅購入時に補助金や減税を利用する際の注意点
補助金額制度や減税を利用するときは、それぞれに適用条件や適用期限が定められています。
また、併用できるものとできないものがある点にも注意が必要です。
注意点
|
概要
|
補助金事業
|
- 国の補助金制度のため、併用できない
- 環境省:ZEH支援事業
- 国土交通省:地域型住宅グリーン化事業、LCCM住宅整備推進事業、こどもみらい住宅支援事業
|
減税制度
|
- 新築した年度や住宅を購入するタイミングで、減税額が変わる、又は制度そのものがなくなる可能性
- 贈与税の非課税措置は、贈与税の申告をした上での非課税措置がとられるため、税務署に申請が必要
|
3-1.補助金事業の注意点
「ZEH支援事業」は環境省による事業で、「地域型住宅グリーン化事業」、「LCCM住宅整備推進事業」、「こどもみらい住宅支援事業」は国土交通省の事業です。
どちらも国の補助金制度にあたり、併用はできません。
住宅を購入する際には、どの補助金制度に申請するか、条件や補助金額照らし合わせながら、絞り込む必要があります。将来の計画も含め、もっとも支援が受けられる制度を選びましょう。
また、ZEH住宅の建築は、ZEHビルダーのハウスメーカー経由で申請を行う必要があります。公募ごとに申請は先着順で、期限も決められています。
予算に達すると、受付終了となるため、事前にZEHビルダーであるハウスメーカーなどに相談して、申し込み状況を確認しておきましょう。
全国には、多数のハウスメーカーがあるため、ZEH住宅を建設する際は、自分に合ったハウスメーカーを選ぶことも大切です。
3-2.減税制度の注意点
減税制度に関しては、新築した年度や住宅を購入するタイミングで、減税額が変わったり、制度そのものがなくなってしまったりする可能性もあります。
それぞれの減税制度の実施期間を確認し、住宅購入の計画を立てる必要があるでしょう。
減税制度の多くは、申請する必要はありませんが、贈与税の非課税措置に関しては、贈与税の申告をした上での非課税措置がとられるため、忘れずに税務署に申請してください。
4.まとめ
住宅購入の補助金制度にはいくつか種類があります。
将来のプランやライフスタイル、予算などに合わせて、もっとも資金面の負担が軽くなる制度を利用しましょう。
住宅購入は、これからの生活水準を決定する、重要な買い物です。
建てるタイミングや、ハウスメーカー選びなども慎重に行い、より良い住宅購入につなげていきましょう。